大判例

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大分地方裁判所 昭和45年(行ウ)18号 判決 1976年4月28日

大分県六野郡三重町大字市場八四七番地

原告

株式会社川辺組

右代表者代表取締役

川辺誠一

右訴訟代理人弁護士

元村和安

同所一一九一番地の一

被告

三重税務署長

右指定代理人

河添実

小沢義彦

樋掛親男

松村弘

村上久夫

西山俊三

田川修

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求める裁判

一、原告(請求の趣旨)

1  被告が原告の昭和三七年四月一日から同三八年三月三一日までおよび同三八年四月一日から同三九年三月三一日までの各事業年度(以下、それぞれ「昭和三七事業年度」、「同三八事業年度」という。)の各法人税について、いずれも同四三年五月一四日付でなした各再更正および重加算税賦課決定処分、(以下、昭和三七事業年度の右処分を合わせて「本件(一)処分」、同三八事業年度の右両処分を合わせて「本件(二)処分」という。)原告の同三九年四月一日から同四〇年三月三一日までの事業年度(以下、「同三九事業年度」という。)の法人税について、同四四年二月一八日付でなした再更正および重加算税賦課決定処分(以下、右処分を合わせて「本件(三)処分」という。)ならびに原告の同四〇年四月一日から同四一年三月三一日までの事業年度(以下、「同四〇事業年度」という。)の法人税について同四四年二月一八日付でなした再更正および重加算税賦課決定処分(以下、両処分を合わせて「本件(四)処分」という。)のうち、(但し、本件(二)ないし(四)処分については、それぞれ別表一の(二)ないし(四)の「裁決額」欄記載のとおり各裁決により一部取消された後のもの)それぞれ別表一の(一)ないし(三)の「更正決定額」欄および同表の(四)の「確定申告額」欄各記載の金額を越える部分をいずれも取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告(請求の趣旨に対する答弁)

主文同旨の判決。

第二、当事者の主張

一、原告(請求原因)

1  本件課税処分の存在

(一) 原告は昭和三七および三八事業年度の法人税について、それぞれ別表一の(一)および〓確定申告額」欄記載のとおりの確定申告をしたところ、被告は同四三年五月一四日それぞれ同別表の(一)および(二)の「再更正決定額」欄記載のとおり本件(一)および(二)処分をなし、そのころ原告に対しその旨通知した。

(二) 原告は昭和三九および四〇事業年度の法人税について、それぞれ別表一の(三)および(四)の「確定申告額」欄記載のとおりの確定申告をしたところ、被告は同四四年二月一八日にそれぞれ同別表の(三)の「再更正決定額」欄および同別表の(四)の「更正決定額」欄記載のとおり本件(三)および(四)処分(以下、本件(一)ないし(四)処分を総称して「本件処分」という。)をなし、そのころ原告に対しその旨通知した。

2  本件処分に対する不服申立

(一) 本件(一)および(二)処分について、原告は昭和四三年五月二七日被告に対し異議申立をしたところ、被告がいずれも決定をしないまま三か月が経過したので、改正前の国税通則法第八〇条第一項第一号の規定によりいずれも同年八月二八日審査請求があつたものとみなされ、国税不服審判所長はいずれも同四五年七月一五日本件(一)処分については審査請求を棄却し、本件(二)処分については別表一の(二)の「裁決額」欄記載のとおりの原処分の一部取消の裁決をなし、いずれもそのころ原告に対しその旨通知した。

(二) 本件(三)および(四)処分について、原告は昭和四四年三月一七日被告に対し異議申立をなしたところ、いずれも被告が決定しないまま三か月が経過したので、いずれも同年六月一八日審査請求があつたものとみなされ、国税不服審査所長はいずれも同四五年七月一五日本件(三)および(四)処分についてそれぞれ別表一の(三)および(四)の各「裁決額」欄記載のとおりの原処分の一部取消の裁決をなし、いずれもそのころ原告に対しその旨通知した。

3  本件処分の違法性

原告には昭和三七ないし四〇事業年度について、それぞれ別表一の(一)ないし(三)の各「更正決定額」欄および同別表の(四)の「確定申告額」欄記載の金額を越える所得は存しない。従つて、本件処分はこの点において違法である。

よつて、請求の趣旨記載のとおり本件処分の取消を求める。

二、被告(請求原因に対する認否)

請求原因第1および第2項の事実は、いずれも認める。同第3項は、争う。

三、被告の主張

1  本件処分の所得算定方式について

(一) 被告は、本件各係争年度の原告の所得算定については、いわゆる財産計算法(一定期間の期首と期末との資産負債を比較して、その差額によつて所得を計算する方法)を採用し、定期預金、車輛、未払金などの各資産負債の科目毎に期首と期末の増減差額を計算し、さらにその金額から原告が申告したいわゆる公表の貸借対照表に計上してある資産負債の各科目毎の金額を控除して、原告の公表当期利益に加算または減算して原告の本件係争年度の所得金額を算定したものであり、右方法は法人税法第一三一条にいう推定課税にはあたらない。仮に、推計課税であるとしても、つぎのとおりその必要性と合理性がある。

(二) 推計課税の必要性

原告は法人税法第一二一条による青色申告書を提出した法人ではないうえ、収支を明らかにする帳簿を備えておらず、帳簿の記載内容も不正確であつて、被告の調査によれば原告の記帳には人夫賃や材料費の架空支払があり、また原告に帰属する多数の簿外預金も存在し、さらに所得計算を明らかにしうる資料の獲得について原告の十分な協力も得られなかつた。

(三) 推定課税の合理性

右(一)記載のとおり原告には多数の簿外預金が存するところ、右預金は株式会社大分銀行三重支店長富田久作成にかかる当時の原告代表者川辺十三日宛の預り証(乙第九号証)などから判断するに、原告あるいは右川辺十三日以外の者の預金とは考えられない。そして川辺十三日個人の昭和三五年ないし同四一年分の所得税の申告およびこれに対する更正決定の所得の種類および金額は別表二記載のとおりであるところ、右によれば川辺十三日個人で経営している漁業の所得はおおむね連年欠損でありその他の給与および配当所得を合算した個人の総所得金額によるも、両人および同人の家族五名の生活費および個人的資産の購入費を控除すれば余剰を生じえないし、このほか同人が個人資産を売却した事実、他から預り金があつた事実も認められないのであるから、漁業の欠損を原告の所得から補てんしていることはあつても川辺十三日の個人所得の余剰金が右簿外預金の供給源となることはありえない。とすれば、右簿外預金を原告に帰属するものと認め、かつ右預金の発生源を前記架空人夫賃等に求めることはいずれも合理的な理由があるものといわねばならない。

2  昭和三七事業年度の原告法人税額

(一) 原告の昭和三七事業年度の各科目毎の法人税確定申告額とこれに対する被告の更正決定額、再更正決定額および裁決額ならびに重加算税賦課決定額の具体的内容は、別表三の1記載のとおりである。(なお、被告の主張額は同表の「裁決額」欄記載の数額である。)

(二) 別表三の1の加算科目について

(1) 同別表の(二)8「雑収入もれ」

雑収入(ブルトーザー賃貸収入)もれとして更正した一五万円は同別表の(二)の10および11で利益に加算した簿外預金の期中増加額に含まれると考えられるのでこれを除外したものである。

(2) 同10の「定期預金」

原告の昭和三八年三月三一日現在の大分銀行三重支店ほか簿外定期預金の合計金額一、〇八五万円から同三七年三月三一日現在の同預金の合計金額四〇五万円を差引いた金六八〇万円を同三七事業年度の簿外定期預金の期中増加額として原告の利益に加算したものである。(なお、公表受入分の数額を含む当期の簿外定期預金の明細は、別表四ならびに別表五の1および2記載のとおりである。)

(3) 同11の「普通預金」

原告が大分銀行臼杵支店に川辺亀蔵名義で、また同行三重支店に川辺元子名義で預金している簿外普通預金の昭和三八年三月三一日の合計残高二六万六、一六七円に同普通預金の期中減少高一八万一、一四一円を加え、さらに同普通預金の同三七年三月三一日現在高二八万〇、七六〇円を差引いた一六万六、五四八円を期中増加額として利益に加算したものである。

(4) 同12「預金雑収受入減算過大」

原告が雑収入に受け入れた預金の額について、金四万七、九七〇円を過大に減算していたので利益に加算したものである。

3  昭和三八事業年度の原告の法人税額

(一) 原告の昭和三八事業年度の各科目毎の法人税確定申告額とこれに対する被告の更正決定額、再更正決定額および裁決額ならびに重加算税賦課決定額の具体的内容は別表三の2記載のとおりである。(なお、被告の主張額は同表の「裁決額」欄記載の数額である。)

(二) 別表三の2の加算科目について

(1) 同別表の(二)2の「損金の額に算入した県市民税」

原告は法人税法上損金として認められない県市民税一一万六、〇〇〇円を損金に算入していたのでこれを否認したものであり、当初の更正において否認した九万五、二八〇円との差額が二万〇、七二〇円である。

(2) 同12「定期預金」

昭和三八事業年度の原告の簿外定期預金の期中増加額は、三五七万八、三七六円である。(なお、公表受入分の数額を含む当期の簿外定期預金の明細は別表四ならびに別表五の2および3記載のとおりである。)

(3) 同13「未払金」

原告が昭和三九年三月三一日現在において天江鉄工所ほか多数の取引先に対して未払金合計一五二万三、〇〇六円(詳細は別表七の1記載のとおりである。)を架空に計上していたので、これを否認し利益に加算したものである。

(4) 同14「未収利息」

(4) 同9「定期預金」

別表三の2の(二)5で加算した二〇〇万円(工事原価否認)など合計三〇〇万円は、同表(二)12で加算した三〇〇万

(5) 同13「事業税引当過大」

昭和三八事業年度の再更正による増差所得に相当する事業税について利益が減算したが、その後裁決によつて所得の一部を取消しているので当該取消された額に相当する事業税を引当過大として利益に加算したものである。

(三) 別表三の3減算科目について

(1) 同別表(三)8の「車輛」

原告が昭和三九年七月一日に一一五万円で取得したとして資産に計上しているSD二〇・五六五一タイヤシヨベルは架空車輛であるから、当該車輛の同四〇年三月三一日現在の価額八三万一、七三八円を利益から減算したものである。(なお、右計算については別表八の「4」欄記載のとおりである。)

(2) 同9「現金」

当期中に簿外の現金二〇〇万円が減少しているので、これを利益から減算したものである。

(3) 同10および11「未払金」

原告の昭和三九年三月三一日現在の架空未払金一五二万三、〇〇六円(詳細は別表七の1記載のとおりである。)が、同四〇年三月三一日現在では二九万九、一三〇円(同表七の2記載のとおり)に減少しているので、右架空未払金の期中減少額一二二万三、八七六円を利益から減算した。

(4) 同12「普通預金」

原告の昭和四〇年三月三一日現在の大分銀行三重支店ほかの簿外普通預金の合計金額五万二、〇三八円から同三九年三月三一日現在の同預金合計金額一六万五、三四八円を差引いた一一万三、三一〇円を同三九事業年度の簿外普通預金の期中減少額として利益から減算したものである。(右普通預金の詳細は別表六記載のとおりである。)

(5) 同13「事業税引当」

昭和三八事業年度の原告の法人税について再更正決定処分を行つた結果、それに伴つて再更正による増差所得の部分について、同三九事業年度の事業税が課税されることになるので、当該事業税相当額を引当損として利益から減算したものである。

(6) 同14「受取利息」

別表三の2、「(三)の9」欄で工事原価否認分と重複するとして減算した簿外定期預金期中増二〇〇万円(神野初子名義ほか四口)の当期の受取利息一三万五、七〇六円を利益から減算したものである。

5  昭和四〇事業年度の原告の法人税額

(一) 原告の昭和四〇事業年度の各科目毎の法人税確定申告額とこれに対する被告の更正決定額および裁決額ならびに重加算税賦課決定額の具体的内容は、別表三の4記載のとおりである。(なお、被告の主張額は同別表「裁決額」欄記載のとおりである。)

(二) 別表三の4の加算科目について

(1) 同別表の(二)の7の「現金」

昭和四一年三月三一日現在において現金四九五万七、七四一円が簿外となつていたのでこれを利益に加算したものである。

(2) 同8「定期預金」

原告の大分銀行三重支店ほかの昭和四一年三月三一日現在の簿外定期預金の合計金額二、五〇五万円から同四〇年三月三一日現在の同預金の合計金額一、八六七万円を差引いた六三八万円を同四〇事業年度の簿外定期預金の期中増加額として利益に加算したものである。(なお公表受入分の数額を含む当期の簿外定期預金の明細は別表四ならびに別表五の4および5記載のとおりである。)

(3) 同9「未払金」

原告の昭和四一年三月三一日現在の架空未払金二、二九二万九、四五三円から、同四〇年三月三一日現在の架空原告が伊予銀行三重支店に昭和三七年一二月二九日に伊藤吉郎名義で預け入れた定期預金二〇万円の未収利息一万〇、四五〇円の計上がもれていたので利益に計上したものである。

(5) 同15「現金」

昭和三九年三月三一日現在において、現金二〇〇万円が簿外になつたので利益に加算したものである。

(6) 同16「受取利息」

原告が大分銀行北浜支店に昭和三七年六月二三日および二四日松田邦久ほか三名の名義で預け入れた定期預金合計金額一〇〇万円(詳細は別表五の2の6記載のとおりである。)の利息五万五、三一二円の計上がもれていたので利益に加算したものである。

(三) 別表三の2の減算科目について

(1) 同別表(三)の六の「普通預金」

原告の昭和三九年三月三一日現在の大分銀行三重支店の簿外普通預金の合計金額一六万五、三四八円から、同三八年三月三一日現在の同預金合計金額二六万六、一六七円を差引いた一〇万〇、八一九円を同三八事業年度の簿外普通預金の期中減少額として利益から減算したものである。(なお、右普通預金の明細は別表六記載のとおりである。)

(2) 同7「車輛」

原告が昭和三九年三月三一日に購入したとして資産に計上したD二〇Aタイヤシヨベルは架空車輛なので、当該車輛の同年三月三一日現在の残高九六万九、三八五円を利益から減算したものである。(なお右計算の詳細は別表八の3欄記載のとおりである。)

(3) 両8「事業税引当」

昭和三七事業年度について再更正決定を行つた結果、それに伴つて再更正による増差所得の部分について同三八事業年度の事業税が課税されることになるので、当該事業税額を引当損として利益から減算したものである。

原告が昭和三九年三月三一日に取得したとするD二〇Aタイヤシヨベルは架空の車輛なので当該車輛の当期の償却額三五万七、七〇三円を否認し利益に加算したものである。

円(簿外定期預金期中増)と重複して所得として把握される可能性があるので、右金額を右科目で減算したものである。

4  昭和三九事業年度の原告の法人税額

(一) 原告の昭和三九事業年度の各科目別法人税確定申告額と、これに対する被告の更正決定額、再更正決定額および裁決額ならびに重加算税賦課決定額の具体的内容は別表三の3記載のとおりである。(なお、被告の主張額は同別表「裁決額」欄記載の数額である。)

(二) 別表三の3の加算科目について

(1) 同別表(二)9の「現金」

昭和四〇年三月三一日現在現金二〇〇万円が簿外になつていたのでこれを利益に加算したものである。

(2) 同10「定期預金」

原告の昭和四〇年三月三一日現在の大分銀行三重支店ほかの簿外定期預金の合計金額一、八六七万円から同三九年三月三一日現在の同預金の合計金額一、一四二万八、三七六円を差引いた七二四万一、六二四円を同三九事業年度の原告の簿外定期預金期中増加額として利益に加算したものである。(なお、これらの公表受入分の数額を含む当期の簿外定期預金の明細については別表四ならびに別表五の3および4記載のとおりである。)

(3) 同11「車輛」

SD二〇・五六五一タイヤシヨベルは原告が昭和三九年五月三〇日に簿外で取得したものであるから、右車輛の同四〇年三月三一日現在の価額一五二万二、〇二五円(計算の詳細は、別表八の「4」欄記載のとおりである。)を利益に加算したものである。

(4) 同12「架空車輛」

未払金二九万九、一三〇円(その詳細は、それぞれ別表七の2および3記載のとおりである。)を差引いた二、二六三万〇、三二三円を当期における架空未払金の期中増加額として利益に加算したものである。

(4) 同10「車輛(簿外分)」

D六〇A井三七三七ドーザーシヨベルは、原告が昭和四一年一月三一日に五〇万円で取得した簿外車輛であるので、当該金額を利益に加算したものである。

(5) 同11および12「車輛(架空分)」

原告が昭和三九年三月三一日および同年七月一日にそれぞれ取得したとするD二〇AタイヤシヨベルおよびSD二〇タイヤシヨベルは、いずれも架空車輛なので、当期減価償却費それぞれ二二万五、七一〇円、三〇万六、九一一円を各否認して利益に加算したものである。

(三) 同別表の減算科目について

(1) 同別表(三)の1の「減価償却超過額の当期認容額」

前期に資本的支出として否認したポツトミキサーの当期償却認容額である。

(2) 同5損金計上法人税加算過大

原告は確定申告において損金に算入した法人税を利益に加算しているところ、うち二万二、六四〇円を過大に加算していたので、当該金額を利益から減算したものである。

(3) 同6「普通預金」

原告の昭和四一年三月三一日現在の簿外普通預金三万四、六九八円から同四〇年三月三一日現在の簿外普通預金五万二、〇三八円を差引いた一万七、三四〇円を同四〇事業年度における簿外普通預金の期中減少額として利益から減算したものである。(右普通預金の明細は別表六記載のとおりである。)

(4) 同7「現金」

当期中に簿外現金が二〇〇万円減少しているのでこれを利益から減算したものである。

(11) 同14「受取利息」

別表三の2、「(三)の9」欄で工事原価と重複するとして減算した定期預金二〇〇万円(神野初子ほか四口)の昭ヨベルの下取りとして処分されたので同年三月三一日現在では存在しないので、原告が計上した当該車輛の同日付価額一六二万一、一五三円を利益から減算したものである。(右車輛の償却関係については別表八の「1」欄記載のとおりである。)

(6) 同9「車輛(神田分)」

原告が昭和四〇年九月一〇日に取得したとして資産に計上したジユピターダンプは架空車輛なので、当該車輛の同四一年三月三一日現在の価額一〇四万二、三〇〇円を利益から減算したものである。

(7) 同10「車輛(圧縮分)」

SD二〇・五六五一タイヤシヨベルは原告が簿外で取得したものなので、その当期償却額五六万一、六二七円を利益から減算したものである。(償却の計算関係は別表八の「4」欄記載のとおりである。)

(8) 同11「車輛(架空分)」

原告が昭和四〇年五月二二日に取得した乗用車一九六〇は同四一年二月一〇日に乗用車S六〇-六四プリンスの下取りとして処分されていて、同年三月三一日現在では存在しないので、原告が計上した当該車輛の右期日の価額三三万二、五三七円を利益から減算したものである。

(9) 同12「建物雑収受入」

建物八〇万円を原告が総収入に受入れているので右金額から当期償却額二二万〇、七三四円を差引いた五七万九二六六円を利益から減算したものである。

(10) 同13「事業税引当」

昭和三九事業年度において再更正処分を行つた結果それに伴つて再更正による増差所得について同四〇事業年度の事業税が課税されることになるので、当該事業税引当額を引当損として利益から減算したものである。

(5) 同8「車輛(架空分)」

原告が昭和三八年八月一七日に取得したD五〇Sドーザーシヨベルは同四一年一月三一日にD六〇Aドーザーシ和四〇事業年度の受取利息九万九、四二五円を利益から減算したものである。

(12) 同15「事業税認定損」

昭和三九事業年度の裁決後の所得金額から再更正決定による所得金額を差引いた金額について右(10)と同様同四〇事業年度の事業税がさらに課税されることになるので、当該事業税相当額を利益から減算したものである。

(13) 同別表(四)「寄付金の損金不算入額」

寄付金の損金算入限度額はその事業年度の所得等を基礎として計算されるところ、再更正処分により原告の昭和四〇事業年度の所得が増加したため、損金算入限度超過額三万四、四三七円を損金に計上したものである。

四、原告(被告の主張に対する認否および反論)

1  被告の主張1はすべて争う。

本件処分はつぎのとおりその所得認定が適法になされていないので、違法である。

(一) 法人の事業年度の所得計算はその年度の法人の益金の額から損金の額を控除してなすべき旨法定されており(法人税法第二二条第一項、昭和四〇年法律第三四号による改正前の法人税法第九条第一項)これが法人の所得計算方法の原則であるところ、被告は本件訴訟において原告の各係争年度の益金の額を明確に主張していないので、被告が右原則に従つて原告の所得を算出していないことは明らかである。とすれば、被告が本件処分の前提としてなした所得認定は推計課税の方法によつたものと考えられる。そして、各種の推計方式中被告のなした計算方法はいわゆる資産負債増減法であると考えられるところ、右方法には過年度における収益が当該年度の収益として誤つて課税されるおそれがあるという欠陥があるので、この方式を採用する場合は他に合理的な方法がなくやむをえない場合にかぎるものと解すべきところ、右推計課税は以下(二)および(三)で述べるとおりその要件を欠き違法である。

(二) 推計課税の必要性の欠如

原告の益金の源泉は土木工事の請負代金収入であるところ、その工事名と工事代金額は各事業年度の工事完成高内訳表(甲第一三号証の一ないし四、甲第一四ないし第一六号証の各一ないし三)によつてその実額計算が可能である。また被告の採用した資産負債増減法は、資産負債の各科目についてそれぞれ期首と期末の差額を主張立証することのできない場合は、この方式によることはできないものと解すべきところ、本件において被告は原告の各係争事業年度の期首と期末の資産負債の各科目の数額がそれぞれいくらであるかを主張していない。このような場合、推計課税の方法を採用するのは違法である。

(三) 推計課税の合理性の欠如

仮に本件の場合原告について損金に関する帳簿書類が不備であり実額計算が不可能であつたとしても、その場合は実額計算により確定した請負工事代金収入額を基礎とし、これに標準率等を利用して所得を算定すべきであり、右方法によらなかつた本件被告の推計課税方法は違法である。

さらに、一般に土木請負業の純利益率(所得金額/工事代金収入額)は平均二・八パーセントであるところ、原告および被告の主張する所得額を前提とした場合の原告の各係争事業年度の純利益率はそれぞれ次表のとおりとなる。

<1> 原告主張を前提とした場合

<省略>

<2> 被告主張を前提とした場合

<省略>

右のとおり、被告の主張を前提とすると、本件係争事業年度の原告の純利益率は年度毎に異常に変動し、かつ全体として高率のものとなるところ、官庁工事を主たる工事受注先とする原告がこのような利益をあげうるはずがなく、この点からも被告の所得認定方法は不合理であるから違法である。

(四) 被告主張の仮名預金は川辺十三日の個人貸借金の回収金、個人事業所得からの流入金、個人財産(山林、土地)の処分からの預り金などの資金またはこれらが変化した資金により発生したものである。

2  被告の主張2ないし5の各(一)の事実中、別表三の1の「(一)、(二)の1ないし3、5ないし7、9、(三)の1ないし3、5」別表三の2の「(一)、(二)の1、4ないし11、(三)の1ないし5」別表三の3の「(一)、(二)の1ないし8、(三)の1、3ないし6」別表三の4の「(二)の1ないし6、(三)の2ないし4、(五)」各欄の各科目について、それぞれ同表の「裁決額」欄記載の数額が存在することは認める。その余の科目についての原告の主張額は、昭和三七ないし三九事業年度については、それぞれ別表三の1ないし3の「更正決定額」欄記載のとおりの数額であり、同四〇事業年度については、別表三の4の「確定申告額」欄記載のとおりの数額(但し、同表の「(一)原告公表当期利益」欄の数額を除く。)である。

同別表の「(一)原告公表当期利益」の科目の数額の計算に関し、日本専売公社三重葉たばこ再乾燥工場新築工事(工事金額四、四四三万二、一〇六円、工事原価四、二二一万〇、八三九円。以下、「専売公社工場用地造成工事」という。)は昭和四一年一二月二〇日に完成したものであるから右工事による利益は、法人税法上同四〇事業年度の原告の益金に計上すべきものではなかった。

3  被告の主張2ないし5の各(二)の事実中、別表五の1ないし5記載のとおりの発生年月日、記号、名義および数額の定期預金ならびに別表六記載のとおりの記号、名義および数額の普通預金が存在すること、右定期預金のうち原告が公表帳簿に雑収入として受け入れた数額(以下、単に「公表受入分」という。)が別表四の「公表受入分」欄記載のとおりの数額であることは認めるが、その余の事実はすべて争う。

なお、右各預金はすべて川辺十三日個人に帰属する預金である。

また、昭和四〇事業年度について、右2記載のとおり専売公社工場用地造成工事によつて原告に生じた利益は法人税法上当該年度の益金として計上すべきではなかつたのであるが、仮に益金に計上するとすれば、所得の計算上は見積原価を損金として計上すべきである。被告が架空経費と主張するものはこの見積原価に該当するものである。また被告は現実に支出したものについても架空経費と誤認している。

五、被告(原告の反論に対する主張)

1  原告の反論1(三)について

原告のように記帳が不備で工事収入が具体的に確定できず、しかも小売業とは異なり工事の内容によつて利益率の変動の激しい土木請負業について原告主張の如く標準率を利用して所得金額を算定することは妥当性を欠く。そして、そもそも原告の申告にかかる収入金額が正確かどうかは問題であるから、右金額を固定して純利益率を算出しその不当性を主張することは無意味である。

2  専売公社工場用地造成工事について

原告は昭和四〇事業年度の法人税の確定申告にあたり専売公社工場用地造成工事による収入を含めて完成工事高を一億五、五六九万九、九〇二円と記載して申告したものであつて、本件(四)処分においても工事収入については右確定申告額をそのまま認容しているにすぎない。

ところで、右工事が昭和四一年三月三一日までに完成し引渡済であつたことは、つぎの事実から明らかである。

(一) 原告会社提出にかかる「昭和四〇事業年度工事完成高内訳表」(甲第一六号証の二)に右工事の工期として「自昭和四〇年七月至昭和四一年三月」なる記載があること。

(二) 原告会社から三重町長宛に「昭和四一年三月中に右工事が完成した」旨の完成工事届が提出されていること。

(三) 造成用地は専売公社の葉たばこ再乾燥工場の敷地となつたのであるが、同工場の新築工事は清水建設株式会社が三億二、一〇〇万円で請負い、該工事は昭和四〇年二月三〇日着工、同四一年三月一五日現在で三四・九九パーセントの進捗率を示しており、同年八月三一日に完成している。そして右敷地の所有権移転登記は同年三月一七日になされている。右事実によれば、原告会社の造成にかかる土地は、同年三月すでに専売公社に引渡されて同公社が使用しており、前記清水建設株式会社がその上に新工場を建築中であつたことが明らかである。

第三証拠

一、原告

1  甲第一ないし第四号証、第五号証の一ないし四、第六ないし第一一号証、第一二号証の一ないし五、第一三号証の一ないし四、第一四ないし第一六号証の各一ないし三、第一七ないし第二五号証、第二六号証の一ないし三、第二七号証、第二八号証の一ないし九、第二九号証の一ないし八、第三〇号証の一ないし七、第三一ないし第三五号証の各一ないし五、第三六号証の一ないし四、第三七および第三八号証。

2  証人久哦正己および原告代表者本人尋問の結果。

3  乙第一ないし第八号証、第三八ないし第四〇号証、第四三号証の一ないし一四および第四四ないし第四七号証の成立はいずれも不知、その余の乙号各証の成立はすべて認める。

二、被告

1  乙第一ないし第九号証、第一〇号証の一ないし四、第一一号証の一ないし三、第一二ないし第一七号証、第一八号証の一ないし三、第一九ないし第二一号証、第二二号証の一ないし三、第二三号証の一、二、第二四ないし第二八号証、第二九および第三〇号証の各一、二、第三一号証、第三二および第三三号証の各一ないし三、第三四号証、第三五および第三六号証の各一、二、第三七ないし第四一号証、第四二号証の一ないし三、第四三号証の一ないし一四、第四四ないし第四七号証。

2  証人橋口俊一および同内田繁の各証言

3  甲第一ないし第四号証、第五号証の一ないし四、第六ないし第一一号証、第一二号証の一ないし五、第二〇号証、第二六号証の一ないし三、第三〇号証の一ないし七の成立はいずれも認める。甲第一九号証のうち郵便官署作成部分の成立は認めるが、その余の部分の成立は不和。その余の甲号各証の成立はすべて不知。

理由

一、請求原因第1および第2項の事実(本件処分の存在および各不服申立の前置)は、いずれも当事者間に争いがない。

二、原告は、本件処分が手続的に違法であると主張するので、この点につき判断する。

1  所得算定方式について

証人橋口俊一および同内田繁の各証言ならびに弁論の全趣旨によれば、被告は原告会社の本件各係争年度の所得金額をいわゆる財産計算法(資産負債増減法。一定期間の期首と期末との資産負債を比較し、その差額によつて所得を計算する方法。)により算定したこと、すなわち、定期預金、車輛、未払金などの各資産、負債の科目毎に期首と期末の増減差額を計算し、さらにその金額から原告が申告したいわゆる公表の貸借対照表に計上してある資産、負債の各科目毎の金額を控除して原告の公表当期利益に加算または減算して算出したものであることが認められる。

右事実によれば、右算定方式は法人税法第一三一条に規定する推計課税と認められ、実額課税であるとする被告の主張は独自の見解であつて採用できない。

2  推計課税の必要性について

推計課税は、法人の財産、債務の増減の状況、収入、支出の状況、生産量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模などを資料として課税標準を間接的に推認して課税する方式である(法人税法第一三一条)ところ、右方式はあくまでも各種資料を数学的に操作して真実の所得の近似値を求めるものであつて、この方式によるときは真実の所得との間に誤差は免れないものであるから、申告に基づく実額課税を原則とする現行税制下においては、推計課税は実額によつて所得を把握しえない止むをえない事情がある場合のみに許される例外的な課税方法といわねばならない。

そこで本件処分において推計課税の必要性があつたかどうかの点につき検討する。(もつとも推計課税と呼ばれる所得算定方式の具体的方法は、千差万別であつて、推計課税の必要性は、右具体的算定方法との相関関係において検討されねばならないことは勿論である。)

原告が法人税法第一二一条による青色申告書を提出した法人でないことを原告は明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。

そして、証人橋口俊一および同内田繁の各証言によれば、原告会社は当時の代表取締役であつた訴外川辺十三日のワンマン会社であつて、現金管理等会社の重要職務は一切同人かぎりでなしていたこと、同人は帳簿関係については知識に乏しかつたため、帳簿の記帳については当時の原告会社従業員訴外米村清および同後藤信子になさしめていたこと、右米村および後藤は右川辺十三日の指示により架空経費を計上するなどして帳簿を操作していたこと、右の次第であつて原告会社はその営業に関し、会計帳簿として総勘定元帳、金銭出納帳、工事原価営業費等の補助簿を作成してはいたものの、これらの記載内容は著るしく不正確なものであつたこと、また、その原始記録である工事費等の出面表もすでにその段階で不正な操作がなされたものであつて、真実を記載した原始記録は存在しなかつたこと、原告会社には各係争年度における原告会社に帰属する多数の簿外預金(仮装名義預金)が存在したこと(詳細については後記認定のとおりである。)が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

とすれば、本件の場合、原告会社の各係争年度の所得を実額で把握することは不可能ないし著るしく困難であつたものと認められるから、被告において前認定の推計により原告会社の所得を認定したことは適法というべきである。

なお、原告はすべての資産負債科目について主張立証していないから資産負債増減法は採用できない旨主張するが、右は独自の見解であつて採用しない。

ところで、原告は本件の場合仮に損金に関する実額把握が不可能であつたとしても、益金に関する実額把握は可能だつたのであるから、実額計算により確定した工事代金収入を基礎として原告会社の所得を算出すべきであると主張するので、この点につき検討する。

なるほど、納税者提出の帳簿書類だけでは年間全所得が実額計算できない場合でも、実額計算できる部分についてはそのかぎりで実額計算をなし実額計算をなしえない部分についてのみ推計をなすべきことは前示推計課税の趣旨に照らし望ましいことであるけれども、本件の場合は前認定のとおり原告会社の帳簿書類の相当部分についてその信憑性に疑いがあり、かつ原告会社には多額の簿外預金が存在したのであるから、原告会社の申告にかかる収入金額が正当であつて他に収入がないものと認められない。(申告にかかる個々の工事代金収入の数額が正確であることとは別問題である。)とすれば、収入金額を実額計算しこれを基礎にして標準率を利用して所得を算定することは不可能ないし著るしく困難であるから、右原告の主張は採用できない。また、被告は本件原告会社の所得の認定については申告にかかる公表利益を基礎にして架空未払金、簿外預金等これに加えてなしたものであつて(後記各所認定のとおり)原告会社の帳簿書類によつて計算できる部分についてはこれによつているのであるから、原告の主張は理由がない。

さらに、原告は申告にかかる収入金額が正確であることを前提として、各係争年度の原告会社の純利益率(所得金額/工事代金収入金額)を計算し、被告主張の所得金額は合理的でないと主張するが、右認定のとおり右主張はその前提を欠くから採用できない。

三、被告主張2ないし5の各(一)の事実中、別表三の1の「裁決額」欄の(一)、(二)の1ないし3、5ないし7、9、(三)の1ないし3、5、別表三の2の「裁決額」欄の(一)、(二)の1、4ないし11、(三)の1ないし5、別表三の3の「裁決額」欄の(一)、(二)の1ないし8、(三)の1、3ないし6、(四)、別表三の4の「裁決額」欄の(二)の1ないし6、(三)の2ないし4、(五)各欄記載の各科目の数額が存在することは当事者間に争いがない。

従つて、各事業年度の原、被告間で争いのある科目とその主張額を表にあらわすと左のとおりとなる。

昭和三七事業年度

<省略>

昭和三八事業年度

<省略>

<省略>

昭和三九事業年度

<省略>

<省略>

昭和四〇事業年度

<省略>

<省略>

四、簿外預金の存否について

被告の主張2ないし5の各(二)の事実中、別表五の1ないし5および別表六記載のとおりの発生年月日、通帳番号、名義および数額の定期預金および普通預金が存在することならびにそのうち原告会社への公表受入分が別表四の各「公表受入分」欄記載のとおりの数額であることは当事者間に争いがない。被告は右預金のうち右公表受入分を除く部分は原告会社の簿外預金であり、その源泉は主として工事収入から架空経費として不正操作して作り出した資金であると主張し、原告は右預金部分はすべて訴外川辺十三日の個人資産であると主張するのでこの点につき検討する。

まず被告のこの点についての調査に対する川辺十三日(当時原告会社代表取締役)の釈明について考えるに、いずれも成立に争いのない甲第一ないし第四号証、甲第六ないし第一一号証および乙第三七号証、証人橋口俊一、同内田繁および同久峨正己の各証言ならびに弁論の全趣旨によれば、川辺十三日は右調査開始当初から一貫して右預金は仮名預金ではなく自分の関知しないものであると主張していたこと、ところが調査の最終段階になつて右預金は古くからある同人個人の預金であり当該年度に発生したものではないと主張を変更し、その後、右預金の一部は原告会社の取引先である訴外重光一夫から昭和三七年六月ころ川辺十三日が借り入れた一五〇〇万円の預金化されたものであるとその主張は具体化し、さらに同四四年三月一七日受付の原告会社から被告宛の法人税の異議申立書(乙第三七号証)には、個人貸借金の回収金、個人事業所得からの流入金、個人財産(山林、土地)の処分金、個人からの預り金などの資金またはこれらが変化した資金が仮名預金の源泉の主たるものである旨の記載があること、本件訴訟においても原告会社はその旨主張し証拠として甲第一八ないし第二五号証、甲第二六号証を提出していることが認められる。右事実によれば、川辺十三日のこの点についての釈明は首尾一貫せずその主張する個々の事実も後記のとおり信憑性に乏しいものといわねばならない。そして、証人橋口俊一の証言により真正に成立したものと認められる乙第一ないし第八号証、いずれも成立に争いのない乙第九号証、乙第一〇号証の一ないし四、乙第一七号証、乙第二六ないし第二八号証、乙第二九号証の一ないし三、乙第三〇および第三一号証の各一、二、乙第三二号証の一ないし四および乙第三三号証の一ないし三ならびに証人橋口俊一および同内田繁の各証言によれば、原告会社の公表帳簿には多くの架空経費が計上されていること、右架空経費計上と右仮名預金の不明入金とがある程度結びつくこと、従つて、右仮名預金は主として右架空経費計上等原告会社の簿外の資産により構成されている疑いが濃厚であること、川辺十三日の個人所得は漁業所得と原告会社からの給与所得であるところ、右漁業所得および給与所得を合わせてもその額は少額であつて到底右仮名預金の資金とはなりえないものであることが認められる。

以上の事実を総合すれば、右仮名預金は原告会社に帰属する簿外預金であると推認すべきものといわねばならない。ところで、原告会社は右仮名預金は川辺十三日の個人資産(個人貸借金の回収金、個人事業所得からの流入金、個人の山林、土地の処分金、預り金)により発生したものであると主張するが、本件全証拠によるもこれを認めるに足りる証拠はない。

もとより、右仮名預金のすべてが原告会社の架空工事費計上により捻出した資金など原告会社の簿外資金をもつてなされたものであると断定するに足りるまでの証拠はなく、右仮名預金の中に間接的にせよ、またその一部分にしても川辺十三日個人の取引によつて得た金銭あるいは同人の他の資金が預け入れられたものであることを完全に否定するに足りる証拠もないものといわねばならない。しかしながら、以上の認定事実によれば本件の如き場合は、右仮名預金のうち公表受入分を除きその全額について原告会社の簿外預金と認められてもやむをえないものといわねばならない。

五、昭和三七事業年度の原告会社の法人税額

昭和三七事業年度について、当事者間で争いになつている科目は前記三認定のとおりであるから、以下その数額について検討する。

1  加算科目

(一)  雑収入もれ

証人内田繁の証言ならびに弁論の全趣旨によれば、雑収入もれ(ブルトーザー賃貸収入)として右年度の更正決定で加算された一五万円は同年度の簿外預金として資金化し左の(二)および(三)記載の定期預金あるいは普通預金の科目で資産として把握されている可能性があること、従つて、右一五万円を雑収入もれとの科目で別に把握すると重複課税のおそれが強いことが認められ、右事実によれば、右科目を零とした被告の処分は正当であると認められる。

(二)  定期預金

前記四認定事実、いずれも成立に争いのない乙第一七号証、第四二号証の一ないし三、証人橋口俊一および同内田繁の各証言ならびに弁論の全趣旨によれば、昭和三七年三月三一日および同三八年三月三一日現在、別表四の各該当欄記載のとおりの総額の仮名定期預金ならびにそのうちの原告会社への公表受入分の総額(いずれも前認定のとおり原告会社に帰属する預金である。)が各存在すること、従つて、右年度の簿外定期預金の期中増加額は六八〇万円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(三)  普通預金

前記四認定事実、前記乙第一七号証、および証人橋口俊一の証言ならびに弁論の全趣旨によれば、昭和三七年三月三一日および同三八年三月三一日現在別表八記載のとおりの総額の原告会社に帰属する仮名普通預金が存在すること右仮名預金のうち、大分銀行臼杵支店の川辺亀三名義の普通預金(通帳番号一〇四五)の同三七年三月三一日現在高のうち、一八万一、一四一円は原告会社の公表帳簿上雑収入として受け入れられたものであること、(別表三の(三)の1の預金雑収受入二、六六五万一、一八九円の一部である)従つて、同三七年三月三一日および同三八年三月三一日現在の簿外普通定期預金の残高はそれぞれ九万九、六一九円、二六万六、一六七円であり、同三七事業年度の簿外普通預金の増加額は、一六万六、五四八円であることが認められる。

(四)  預金雑収受入過大

前記乙第一七号証および証人橋口俊一の証言ならびに弁論の全趣旨によれば、昭和三七事業年度の簿外預金中、原告会社が雑収入に受入れた金額の合計が二、六六〇万三、二一九円であつたのを被告が過誤により二、六六五万一、一八九円として処理していたので、その差額四万七、九四〇円を右加算科目で訂正したことが認められるから、右処理は正当であるものと認められる。

2  減算科目

(一)  普通預金過大

証人橋口俊一の証言によれば、被告は更正決定によつて昭和三八年三月三一日現在の原告会社の簿外普通預金が別表八記載以外に二三万二、七八三円存在していたものと認定していたが、調査の結果右は存在しないものであることを発見し、再更正決定において右数額を右科目で減算したことが認められる。右措置は正当である。

六、昭和三八事業年度の原告会社の法人税額

昭和三八事業年度の原告会社の所得中、当事者間に争いとなつている科目は前記三認定のとおりであるから、以下その数額について順次検討する。

1  加算科目

(一)  損金の額に算入した県市民税

成立に争いのない乙第一八号証の一ないし三および証人橋口俊一の証言によれば原告会社は法人税法上損金として認められない県市民税一一万六、〇〇〇円(延滞金を含む額である。)を損金に計上していたことが認められ、右事実によればこれを右(一)加算科目で更正したことは正当であると認められ、右認定に反する証拠はない。

(二)  減価償却の償却超過額

成立に争いのない乙第一九号証および証人橋口俊一の証言によれば、右科目の数額について当事者間で争いのない数額は二万〇、六四二円であつたが、後記六の2の(二)認定のとおり、D二〇Aタイヤシヨベルは架空車輛であるから、右二万〇、六四二円から、右車輛について損金に減価償却費として過大に計上されていたとして右(二)科目で加算更正した七、二八二円を差引いた残額一万三、三六〇円を右(二)加算科目の数額として認定したことが認められるから、右措置は正当である。

(三)  定期預金

前記四認定事実、証人橋口俊一および同内田繁の各証言ならびに弁論の全趣旨によれば、昭和三八年三月三一日および同三九年三月三一日現在、別表四記載のとおりの総額の仮名定期預金が存在し、そのうち同表「公表受入分」欄記載の金額が原告会社に公表受入れられていること、そして、同別表記載の数額の簿外定期預金のほかに、昭和三九年三月三一日現在大分銀行北浜支店に一〇〇万円、同行三重支店に二〇〇万円(従つて、同支店の総額は二、三〇〇万円となる。)の簿外定期預金が存在したこと、従つて、右年度の簿外定期預金の期中増加額は三五七万八、三七六円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(四)  未払金

成立に争いのない乙第一一号証の一および証人橋口俊一の証言によれば、昭和三八事業年度の原告会社の公表帳簿上、未払金は五一〇万四、七三九円計上されているが、そのうち多数の架空未払金があつて、実際の未払金は三五八万一、七三三円であつたこと、従つてその差額一五二万三、〇〇六円を過大に損金に計上して申告していたことが認められ、右事実によれば、右架空未払金計上分一五二万三、〇〇六円を右科目で利益に加算したことは正当であると認められる。

(五)  未収利息

証人橋口俊一の証言によれば、発生年月日昭和三七年一二月二九日、通帳番号六九三六の伊藤吉郎名義の簿外定期預金二〇〇万円(その存在については前記のとおり当事者間に争いがない。)の未収利息一万〇、四五〇円が昭和三九年三月三一日現在すでに計算されていたのに、申告においてはこの計上がもれていたことが認められ、右事実によれば被告がこれを右科目で加算更正したことは正当である。

(六)  現金

前記四認定事実、前記乙第一〇号証の一、二、および証人橋口俊一の証言によれば、昭和三九年四月一日に大分銀行三重支店に江藤浩、江藤ミツ名義で簿外定期預金合計二〇〇万円が預け入れられていること、右預金は原告会社の公表帳簿上で同年三月三一日に支払われたと記帳されている架空人夫賃二二三万八、〇〇〇円に対応するものであることが認められ、右事実によれば、右簿外預金に対応して同年三月三一日の段階では現金二二三万八、〇〇〇円を原告会社は簿外で保持していたものと推認される。そして右推認を覆すに足りる証拠はないから、右金員を加算科目「現金」で利益に加算したことは正当であると認められる。

(七)  受取利息

証人橋口俊一および内田繁の各証言ならびに弁論の全趣旨によれば、前記五の1の(二)認定の簿外定期預金六八〇万円中の一〇〇万円は、当初更正および再更正処分の段階では昭和三八事業年度に発生したものと認定していたが、調査の結果右預金は同三七事業年度に大分銀行北浜支店に発生していたものが翌事業年度に解約されて同行三重支店に送金されてきたものであること、解約時の右利息五万五、三一二円については右三重支店では預金化されていないことが判明したことが認められる。右事実によれば右利息五万五、三一二円を右科目で加算更正したことは正当であると認められる。

2  減算科目

(一)  普通預金

前記四認定事実および証人橋口俊一の証言によれば、昭和三八年三月三一日および同三九年三月三一日現在別表六の各該当欄記載のとおりの総額の仮名普通預金が存在すること、従つて同三八事業年度の簿外普通預金の期中減少額は一〇万〇、八一九円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(二)  車輛

前記乙第七号証および証人橋口俊一の証言によれば、原告会社の公表帳簿上、昭和三九年三月三一日に一〇〇万円で購入したと記帳されているD二〇Aタイヤシヨベルは、架空車輛であると認められ、右事実によれば、被告が右一〇〇万円から減価償却費を除いた九六万九、三八五円を損金として右科目で減算したことは正当である。

(三)  事業税引当

法人税法上前事業年度の事業税は翌事業年度の損金となると規定されている(法人税法第二二条)ところ、証人橋口俊一の証言ならびに弁論の全趣旨によれば、昭和三七事業年度の原告会社の所得金額の再更正決定額は申告額よりも五八六万一、二四六円増額したこと、右金額に対応する事業税引当額は六八万八、四四〇円以下であることが認められるから、右金額を損金として減算したことは正当である。

(四)  定期預金

証人内田繁の証言ならびに弁論の全趣旨によれば、前記六の1の(三)認定の原告会社の簿外定期預金当期増加額三五七万八、三七六円中、一〇〇万円については右六の1の(七)認定のとおり昭和三七事業年度の簿外定期預金の切りかえ分であること、同じく二〇〇万円については、別表三の2、(二)の5の工事原価否認分(架空のセメント仕入代金支払の否認分)として更正決定により原告会社の利益に加算した二〇〇万円がその源泉となつている可能性を否定できないことが認められ、右事実によれば、右合計三〇〇万円を二重課税を避けるため右科目で減算したことは正当であると認められる。

七、昭和三九事業年度の原告会社の法人税額

昭和三九事業年度の原告会社の所得中、当事者間で争いとなつている科目は前記三認定のとおりであるから、以下その数額について順次検討する。

1  加算科目

(一)  現金

成立に争いのない乙第二〇号証、前記乙第一〇号証の三および証人橋口俊一の証言によれば、原告会社の公表帳簿上には、昭和四〇年三月三一日に訴外渡辺岩雄に対し、金二〇〇万円の支払をなしたように記帳されているが、右は虚構の事実であること、従つて、右期日には右架空支払金に対応する金二〇〇万円を簿外現金として原告会社は保持していたものと推認され、右推認を覆すに足りる証拠はないから、右金員を右科目で加算したことは正当であると認められる。

(二)  定期預金

前記四認定事実、証人橋口俊一および同内田繁の各証言ならびに弁論の全趣旨によれば、昭和三九年三月三一日および同四〇年三月三一日現在別表四記載のとおりの総額の仮名定期預金が存在し、そのうち同表「公表受入分」欄記載の金額が原告会社に公表受入れられていること、従つて、右年度の簿外定期預金の期中増加額は七二四万一、六二四円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(三)  車輛

前記乙第七号証および成立に争いのない乙第一四号証ならびに証人橋口俊一の証言によれば、原告会社の公表帳簿に計上されていない車輛(SD二〇・五六五一タイヤシヨベル)を原告会社が昭和三九年五月三〇日に二三〇万円で購入していること、昭和三九事業年度中のその減価償却分は七七万七、九七五円であること、従つて同四〇年三月三一日現在右車輛の価額は一五二万二、〇二五円であつて、同額の簿外資産が右時点で存在したことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。とすれば、右車輛を簿外車輛として右科目で利益に計上したことは正当である。

(四)  架空車輛

前記乙第七号証および証人橋口俊一の証言によれば、前記六の2の(二)認定のとおり原告会社の公表帳簿上昭和三九年三月三一日に一〇〇万円で購入したとされているD二〇Aタイヤシヨベルは架空車輛であることが認められ、右事実によれば右架空車輛の架空減価償却分三五万七、七〇三円を右科目で利益に加算したことは正当であると認められる。

(五)  事業税引当過大

法人税法上前事業年度の事業税は翌事業年度の損金科目に計上すべきものとされている(法人税法第二二条)ところ、証人内田繁の証言によれば、昭和三八事業年度の原告会社の所得について、裁決額は再更正決定額よりも二九四万四、六八八円減額されていること、右数額に対応する事業税引当額は三五万三、三六二円であることが認められる。(従つて、被告の主張額は二円の違算がある。)

2  減算科目

(一)  前記否認未成工事

成立に争いのない乙第二三号証の一、二および前記乙第一八号証の二ならびに証人橋口俊一の証言によれば、右科目について違算によつて一、〇〇〇円損金として過大に計上したことが認められ、右事実によればこれを訂正した被告の処分は正当なものであると認められる。

(二)  未収利息

証人橋口俊一の証言によれば、昭和三八事業年度の加算科目「未収利息」で一万〇、四五〇円が前記六の1の(五)認定のとおり同年度の簿外利益として加算されたので、右数額を同三九事業年度の損金として右科目で減算したことが認められ、右措置は正当であると認められる。

(三)  車輛

前記乙第七号証および証人橋口俊一の証言によれば、昭和三九年七月一日に一一五万円で購入したとして公表帳簿に計上されたSD二〇タイヤシヨベルは架空車輛であることが認められ、右事実によれば、右一一五万円から減価償却費を除いた八三万一、七三八円を損金として右科目で減算したことは正当である。

(四)  現金

証人橋口俊一の証言によれば、昭和三八事業年度の加算科目「現金」で二〇〇万円が前記六の1の(六)認定のとおり同年度の簿外資金として加算されたので右数額を昭和三九事業年度の所得から除外するために右科目で損金として計上したことが認められ、右措置は正当であると認められる。

(五)  未払金

成立に争いのない乙第一一号証の一、二および証人橋口俊一の証言によれば、昭和四〇年三月三一日現在原告会社の公表帳簿上未払金を合計六四一万五、九五六円計上していること、しかしながら、調査の結果、現実の未払金は六一一万六、八二六円であることが判明したこと(その詳細は別表七の2記載のとおりであると認められる。)従つてその差額二九万九、一三〇円は架空未払金であつて損金として計上すべきでなかつたこと、前記六の1の(四)認定のとおり昭和三八事業年度に未払金過大計上分として一五二万三、〇〇六円を科目「未払金」で加算していること、従つて右差額一二二万三、八七六円(架空未払金の当期中減少額)を損金として減算したものであることが認められ、右措置は正当であると認められる。

(六)  普通預金

前記四認定事実および証人橋口俊一の証言によれば、昭和三九年三月三一日および同四〇年三月三一日現在別表六各該当欄記載のとおりの数額の仮名普通預金が存在すること、従つて、右年度の簿外普通預金の期中減少額は一一万三、三一〇円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はないから、右数額を原告会社の損金として右科目で計上したことは正当であると認められる。

(七)  事業税引当

証人橋口俊一の証言および弁論の全趣旨によれば、昭和三八事業年度の原告会社の所得金額について、再更正決定額は更正決定額よりも五三六万六、六二六円増額したこと、右金額に対応する事業税引当額は六四万四、〇〇四円以下であることが認められ、右金額を右科目で損金として減算したことは正当である。

(八)  受取利息

証人内田繁の証言によれば、前記六の2の(四)認定のとおり、昭和三八事業年度で所得の二重把握の可能性があるとの理由で簿外預金から除かれた二〇〇万円に対応する当期の利息一三万五、七〇六円は、当期利益に計上すべきものではないことが認められ、これを右科目で減算したことは正当であると認められる。

八、昭和四〇事業年度の原告会社の法人税額

昭和四〇事業年度の原告会社の所得金額中、当事者間で争いになつている科目は前記三認定のとおりであるから、以下順次その数額について検討する。

1  加算科目

(一)  原告会社公表当期利益

原告は、右科目について、専売公社工場用地造成工事は昭和四〇事業年度中には完成しておらず翌事業年度の昭和四一年一二月二〇日に完成したものであるから右工事による利益は法人税法上益金に計上すべきものではなかつたと主張するので、この点につき検討する。

原告会社は昭和四〇事業年度の完成工事高として一億五、五六九万九、九〇二円(右工事完成高を含む。)を申告したが、右金額のうち右工事完成高分四、四四三万二、一〇六円は右工事が同年度中には完成していなかつたのに過誤により計上したものであるから、原告会社の真実の完成工事高は一億一、一二六万七、七九六円であると主張するところ、原告会社において申告書を提出した以上、反証なきかぎりその申告書に記載された完成工事高が真実であり、右工事を含む諸工事が右年度中に完成していたものと推定すべきところ、証人久峨正己の証言および原告会社代表者本人尋問の結果中右推定に反する部分は後記各証拠に照らし推信できず、他に右推定を覆すに足りる証拠はなく、かえつて、いずれも成立に争いのない乙第三八ないし第四〇号証および原告会社代表者本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一六号証の二、証人久峨正己の証言ならびに原告会社代表者本人尋問の結果によれば、原告会社提出にかかる「昭和四〇事業年度工事完成高内訳表(甲第一六号証の二)には右工事の工期として「自昭和四〇年七月至昭和四一年三月」なる記載があること、原告会社から三重町長宛に「昭和四一年三月に右工事が完成した」旨の完成工事届が提出されていること、右工事は専売公社の葉たばこ再乾燥工場の用地造成工事であるところ、右工場の建設工事(請負人清水建設株式会社)は同四〇年一一月三〇日に着工され、同四一年三月一五日は進捗率三四・九九パーセントを示し、同年八月三一日に完成したこと、右工場敷地の所有権移転登記は同年三月一七日になされていることが認められるから、右専売公社工場用造成工事は同四〇事業年度中に完成していたものと認めるのを相当とする。とすれば、右工事による利益を益金に計上したことは正当であるから、右科目の数額は被告主張のとおりであると認められる。

(二)  現金

前記三認定事実、前記乙第九号証、成立に争いのない乙第二一号証および証人橋口俊一の証言によれば、株式会社大分銀行三重支店に無記名の定期預金がつぎのとおり存在すること

<省略>

右預金は原告会社の簿外預金であることが認められ、右事実によれば、昭和四一年三月三一日現在原告会社は簿外で現金六〇〇万円を保持していたものと認められる。そして、原告会社の公表帳簿上右期日に現金一〇四万二、二五九円が残つていたとされているのでその差額四九五万七、七四一円を加算科目「現金」で利益に加算したことは正当であると認められる。

(三)  定期預金

前記四認定事実、証人橋口俊一および同内田繁の各証言ならびに弁論の全趣旨によれば、昭和四〇年三月三一日および同四一年三月三一日現在、別表四各該当欄記載のとおりの総額の仮名定期預金が存在すること、そのうち同表「公表受入分」欄記載の金額が原告会社に公表受入れられていること、従つて右年度の簿外定期預金の期中増加額は六三八万円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。とすれば右金額を原告会社の所得として計上することは前認定四のとおり正当なものと認められる。

(四)  未払金

成立に争いのない乙第一一号証の二、三ならびに証人橋口俊一および同内田繁の各証言によれば、昭和四一年三月三一日現在原告会社の公表帳簿上未払金は合計三、七六八万八、二一七円計上されていること、ところが、現実の未払金額は一、四七五万八、七六四円であること、従つて右差額二、二九二万九、四五三円は架空未払金であること、そして前記七の2の(五)認定のとおり、昭和四〇年三月三一日現在の架空未払金は二九万九、一三〇円であるから、右二、二九二万九、四三五円から右二九万九、一三〇円を差引いた二、二六三万〇、三二三円を昭和四〇事業年度における架空未払金の期中増加額として利益に加算したことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(五)  車 輛(簿外分)

前記乙第七号証および成立に争いのない乙第一五号証ならびに証人橋口俊一の証言によれば、原告会社は昭和四一年一月三一日D六〇A#三七三七ドーザーシヨベル一台を五〇〇万円で購入したこと、右車輛は公表帳簿には計上されていない簿外車輛であることが認められ、右事実によれば右五〇〇万円を右科目で利益に加算したことは正当であると認められる。

(六)  車 輛(架空分)

前記乙第七号証および証人橋口俊一の証言ならびに前記六の2の(二)および七の2の(三)認定事実によれば、原告会社の公表帳簿上資産として計上されているD二〇タイヤシヨベルおよびSD二〇Aタイヤシヨベルはいずれも架空車輛であること、右二台の架空の減価償却費はそれぞれ二二万五、七一〇円、三〇万六、九一一円であり公表帳簿上損金に計上されていたことが認められ、右事実によれば右金額を右科目で利益に加算したことは正当であると認められる。

2  減価科目

(一)  減価償却超過額の当期認容額

証人橋口俊一および弁論の全趣旨によれば、原告会社が昭和三九年三月三一日に二万円でポツトミキサーを購入したこと、右について同四〇事業年度の減価償却費は三、七五〇円であること、確定申告で右金額の申告がもれていたことが認められ、右事実によれば、右申告もれについてこれを損益に計上したことは正当であると認められる。

(二)  損益計上法人税加算過大

証人橋口俊一および弁論の全趣旨によれば、別表三の3(二)の1欄記載の金額中三二万二、六四〇円の法人税については支払ずみであるのに公表帳簿には益金として計上されていなかつたので昭和三九事業年度において加算更正したこと(法人税法第三八条)、ところが右金額を原告は同四〇事業年度の利益として申告したことが認められ、右事実によれば二重課税をさけるため、右金額を右科目で損金に計上したことは正当であると認められる。

(三)  普通預金

前記四認定事実および証人橋口俊一の証言によれば、昭和四〇年三月三一日および同四一年三月三一日現在、別表六各該当記載のとおりの総額の仮名普通預金が存在すること、従つて、右年度の簿外普通預金の期中減少額は、一万七、三四〇円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はないから、右数額を原告会社の損金として計上することは正当なものと認められる。

(四)  現金

証人橋口俊一の証言によれば、昭和三九事業年度の加算科目「現金」二〇〇万円が、前記七の1の(一)認定のとおり同年度の簿外利益として加算されたので、右数額を昭和四〇事業年度の原告会社の資産から除外するために右科目で損金に計上したことが認められ、右措置は正当である。

(五)  車輛(架空分)

前記乙第七号証および証人橋口俊一の証言によれば、原告会社が昭和三八年八月一七日に五四〇万円で購入したD五〇S一六五二ドーザーシヨベル一台は、同四一年一月三一日に下取りに出され、同四一年三月三一日には存在しなかつたにもかかわらず、原告会社は公表帳簿上では存在したとして減価償却後の残高一六二万一、一五三円を資算として計上していたこと、原告会社が昭和四〇年九月一〇日に一四〇万円で購入したとして公表帳簿に計上されているジユピターダンプは訴外神田勝の所有車輛であるから、右車輛の同四一年三月三一日現在の価額として資産に計上されている一〇四万二、三〇〇円は架空の資産であることが認められ、右事実によれば、右数額を右各科目で損金として減算したことは正当であると認められる。

(六)  車輛(圧縮分)

前記乙第七号証および証人橋口俊一の証言によれば、前記七の1の(三)認定のとおり、原告会社の公表帳簿に計上されていない車輛(SD二〇・五六五一タイヤシヨベル。取得価額二三〇万円)の昭和四〇事業年度の減価償却分五六万一、六二七円について被告が損金として減算したことが認められ、右措置は正当である。

(七)  車輛(架空分)

成立に争いのない乙第二四号証および証人橋口俊一の証言によれば、原告会社の公表帳簿上、昭和四〇年五月二二日に五〇万二、五一〇円で購入した乗用車および同じく同年二月一〇日に五〇万円で購入した乗用者の同年三月三一日現在の価額各三三万二、五三七円および四六万九、二五〇円を資産として計上していること、しかしながら、実際には前者の乗用車は同年二月一〇日に後者の乗用車の下取りに出されていること、前車は同年三月三一日には存在しなかつたことが認められる。とすれば右架空車輛の同年三月三一日現在の価値を損金として差引いたことは正当である。

(八)  建物雑収入受入

成立に争いのない乙第二二号証の一ないし三および証人橋口俊一の証言ならびに弁論の全趣旨によれば、昭和三九事業年度において、簿外建物が存在したとして八〇万円を利益に加算したこと、(別表三の3、(二)の6「工事原価否認」欄の数額の一部である。)右金額について同四〇事業年度に原告会社は公表帳簿上雑収入に受け入れて確定申告したこと、右金額については前事業年度との重複課税を避けるためこれを除かなければならないところ、被告は過誤により右措置を怠り、右建物の減価償却費として二二万〇、七三四円を損金に計上したこと(別表三の4、(三)の1欄)が認められる。とすれば、右八〇万から二二万〇、七三四円を差引いた五七万九、二六六円を減算もれとして右科目で損金に計上したことは正当である。

(九)  事業税引当

法人税法上前事業年度の事業税は翌事業年度の損金となるとされているところ、証人橋口俊一の証言ならびに弁論の全趣旨によれば、昭和三九事業年度の原告会社の所得金額について、再更正決定額は更正決定額よりも六二九万八、九七四円増額したこと、右金額に対応する事実税引当額は七五万五、八八〇円以下であることが認められ、右事実によれば右七五万五、八八〇円を損金に計上した被告の措置は正当であると認められる。

(一〇)  受取利息

証人内田繁の証言によれば、前記六の2の(四)認定のとおり、昭和三八事業年度において簿外定期預金二〇〇万円が重複課税の可能性があるとの理由で減算されたこと、従つて、右二〇〇万円に対応する当期利息九万九、四二五円は当期利益に計上すべきではないことが認められ、右事実によれば九万九、四二五円を右科目で減算したことは正当である。

(一一)  事業税認定損

前記のとおり前事業年度の事業税は翌事業年度の損金となるところ、証人内田繁の証言ならびに弁論の全趣旨によれば、昭和三九事業年度の原告会社の所得金額について、裁決額は再更正決定額よりも二一万七、六五八円増額していること、右数額に対応する事業税引当額は二万六、一一八円であることが認められる。(従つて、被告の主張額は二八円の違算がある。)

(一二)  寄付金の損金不算入額

法人税法第三七条第2項によれば、法人の支出した寄付金の額のうち当該事業年度の法人の所得金額を基礎として政令で定めるところにより計算した損金算入限度額を越える部分は損金に算入しえないとされているところ、前記乙第二二号証の一および証人橋口俊一の証言によれば、当期の原告会社の寄付金のうち三万四、四三一円が右損金算入限度額超過額として利益に加算して申告されていたこと、しかしながら裁決により当期の原告会社の所得認定が増額したので右金額を損金に計上しうることになつたことが認められる。とすれば右金額(但し、移記の際の誤記のため六円増の三万四、四三七円)を右科目で減算したことは正当である。

九、右五ないし八認定の事実によれば、原告会社の昭和三七ないし四〇事業年度の所得金額はそれぞれ七六〇万二、五二二円、六二五万六、〇一四円、一〇五八万〇、二六二円および三、六五七万九、九六七円となるからその法人税額をそれぞれ三〇五万八、三〇〇円、二二七万七、二八〇円、四〇八万九、四〇〇円、一四五二万一、五二〇円と認定した被告の処分はいずれも正当であると認められる。

そして、前記各所で認定したとおり、原告会社はその法人税額の基礎となるべき事実を隠ぺい、仮装し、それに基づき納税申告書を提出していたことは明らかであるから、国税通則法第六八条第一項の規定に基づき原告会社に対し、昭和三七ないし四〇事業年度についてそれぞれ七六万八、三〇〇円、二七万四、五〇〇円、七九万八、〇〇〇円、四〇一万七、〇〇〇円の重加算税を課したのは正当であると認められる。

一〇、とすれば、本件処分はいずれも適法になされたものであつて、本件処分には何ら取消事由は存しないものと認められる。

よつて、原告の本訴請求は理由がないのでいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 甲斐誠 裁判官 杉森研二 裁判長裁判官三宅純一は、転任につき、署名捺印することができない。裁判官 甲斐誠)

別表一

(一) 昭和三七事業年度

<省略>

(二) 昭和三八事業年度

<省略>

(三) 昭和三九事業年度

<省略>

(四) 昭和四〇事業年度

<省略>

別表二

<省略>

( )書は更正分

別表三の1

昭和三七事業年度

<省略>

<省略>

別表三の2

昭和三八事業年度

<省略>

<省略>

<省略>

別表三の3

昭和三九事業年度

<省略>

<省略>

<省略>

別表三の4

昭和四〇事業年度

<省略>

<省略>

<省略>

別表四

各年度別定期預金総括表

<省略>

別表五の1

各年度別定期預金明細表

昭和37年3月31日現在

1 大分銀行三重支店

<省略>

2 大分県信用組合三重支店

<省略>

3 伊予銀行三重支店

<省略>

4 大分銀行竹田支店

<省略>

5 大分銀行臼杵支店

<省略>

6 伊予銀行臼杵支店

<省略>

別表五の2

各年度別定期預金明細表

昭和38年3月31日現在

1 大分銀行三重支店

<省略>

<省略>

2 大分県信用組合三重支店

<省略>

3 伊予銀行三重支店

<省略>

4 大分銀行野津支店

<省略>

5 大分銀行竹田支店

<省略>

6 大分銀行北浜支店

<省略>

別表五の3

各年度別定期預金明細表

昭和39年3月31日現在

1 大分銀行三重支店

<省略>

<省略>

2 大分県信用組合三重支店

<省略>

3 伊予銀行三重支店

<省略>

4 西日本相互銀行臼杵支店

<省略>

5 大分銀行野津支店

<省略>

別表五の4

各年度別定期預金明細表

昭和40年3月31日現在

1 大分銀行三重支店

<省略>

<省略>

2 大分県信用組合三重支店

<省略>

3 伊予銀行三重支店

<省略>

4 西日本相互銀行臼杵支店

<省略>

5 南野津田平農協

<省略>

別表五の5

各年度別定期預金明細書

昭和41年3月31日現在

1 大分銀行三重支店

<省略>

<省略>

2 大分県信用組合三重支店

<省略>

3 伊予銀行三重支店

<省略>

<省略>

4 西日本相互銀行臼杵支店

<省略>

5 南野津田平農協

<省略>

6 三重農協百枝支所

<省略>

7 豊和相互銀行三重支店

<省略>

別表七の1

未払金の過大計上分の内訳(昭和39.3.31現在分)

<省略>

別表六

各年度別普通預金総括表

<省略>

<省略>

別表七の2

未払金の過大計上分の内訳(昭和40.3.31現在分)

<省略>

<省略>

<省略>

別表七の3

未払金の過大計上分の内訳(昭和41.3.31現在分)

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別表八 車輛否認等総括表

<省略>

別表九

<省略>

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